1. 日本の死者数、例年インフルエンザで亡くなる人より少ない

新型コロナウイルスが流行し始めた2月から現在までの約5か月間、日本で亡くなった人は998人（7月28日時点）、例年インフルエンザで亡くなる人の3分の1の数です。これは、感染した人の多くが無症状・軽症であり、自分の免疫で治ってしまうことが多いためです。

図１の「人口10万人あたりの死者数」のグラフを見ると、人口10万人あたり、日本は0.79人、最も多いイギリスでは68.99人の方が亡くなっています。他国と比較しても、日本の死者数が少ないことが分かります。

2. 新型コロナウイルスの全体像～「おとなしいコロナ」と「凶暴なコロナ」～

日本の感染者の症状を見ると、無症状や軽症が大半ですが、感染者数や死亡者数などの数ばかりを見ることが多く、新型コロナウイルスの全体像があまり見えていません。一体どんなウイルスなのか、新型コロナウイルスを2つの種類に分けて、現在の状況を確認していきましょう。

1つ目の新型コロナウイルスは、体内に入り込む力は強いですが、伝染力と毒性は弱く、感染しても多くの場合は無症状や風邪程度の症状で終わる「おとなしいコロナ」です。日本で新たに感染が確認されている人の多くが、自分の免疫で治せてしまう「おとなしいコロナ」だと言われています。

2つ目の新型コロナウイルスは、非常に低い確率ですが、1万人～2.5万人に1人程度、肺を中心に臓器を重症化させ、死亡させてしまう「凶暴なコロナ」です。日本では、この「凶暴なコロナ」により亡くなる人が欧米諸国に比べて非常に少ない状況です（図１参照）。

3. 日本の死者数が少ない３つの理由～国によって状況が異なる～

日本の死者数が欧米諸国の100分の1以下であることについて、次の3つの理由が考えられます。

① 高齢者への感染率が低い

新型コロナウイルスが流行する前から、日本ではインフルエンザやノロウイルスに対する感染症対策が日頃から行われていました。例えば、老人ホームでは、ウイルスが流行している間は家族面会を禁止、外出自粛などの対策です。海外では、老人ホームや介護施設での集団感染、亡くなる場合が多いため、死亡者数も多いと考えられています。

② 自然免疫で治る確率が欧米より日本人(アジア人）の方が高い

国際医療福祉大学の高橋泰（たかはし たい）教授のシミュレーションによると、日本人が自然免疫で治せる確率は98%だということが分かりました。。つまり、新型コロナウイルスに感染した人が、次の人にうつしても、その多くの人が自然免疫で治せてしまうため、感染のチェーンが途切れやすいということです。

③ 重症化しても血栓（※）ができにくいため、死亡率が低い

重症化した時の死亡率は、日本では0～69歳で0.01%、70歳以上では0.4%ですが、欧米では0～69歳で0.05%、70歳以上では2%だとされています。わずかな差かもしれませんが、このわずかな差が大きな違いを生んでいるのですね。

※「血栓（けっせん）」とは、心臓病の一つ。血管が詰まり、十分に血液が心臓まで届かないために起こる病気。

～実習生の皆さんへ～

国と地域によって、新型コロナウイルスの被害はそれぞれです。ベトナムでは、亡くなった人もいませんね。日本では、感染者数が増えていますが、亡くなる人の数はそこまで大幅に増えていません。世界の状況を見ると、ベトナムや日本とは桁違い（けたちがい）の感染者数や死亡者数に驚くかもしれませんが、感染状況は国や地域によって大きく異なるということを理解しておきましょう。

日本では、デパートや飲食店、映画館などで営業が開始されてから約２か月が経ちました。お店の入り口にはアルコール消毒、検温、必ずマスクを着用して入店、入場人数の制限、入口と出口を分ける、など様々な対策が取られています。

どこの国でも感染のリスクはあります。これからは、「新型コロナウイルスと共存していく」、新しい時代の中で生きていけるように、あまり不安視しすぎず、明るい気持ちで過ごしていきましょうね。

出典：
 東洋経済オンライン「新型コロナ、日本で重症化率・死亡率が低いワケ」
https://toyokeizai.net/articles/-/363402（2020年7月28日参照）
 Johns Hopkins CSSE “Coronavirus COVID-19 Global Cases”
https://gisanddata.maps.arcgis.com/...html（2020年7月28日参照）