新型コロナウイルス感染症のワクチン開発が、前代未聞のスピードで進められています。一般的なワクチンの開発には、調査だけでも数年かかり、使えるようになるまで10年から15年かかるとされています。
その中で、現在、世界中の科学者たちがワクチンの開発に取り組んでいます。イギリスのオックスフォード大学と製薬会社のアストラゼネカが共同開発しているワクチンでは、臨床試験で有望な結果が出たと報告されています。
患者から採取したサンプルを分析しているところ(オックスフォード大学)
出典:BBC NEWS JAPAN「英オックスフォード大のワクチン、治験で『期待持てる』結果 免疫反応を誘発」
1. ものすごいスピードでワクチン開発が進んでいる
世界保健機関(WHO)によると、7月15日時点で163種類のワクチンが開発されており、そのうち、23種類はヒトへの臨床試験が始まる段階にあります。最終段階の臨床試験が始まるワクチンは5種類まで増えており、日本もワクチンの確保に向けて動いているところです。
【世界】 効果が期待されている主なワクチン
オックスフォード大学とアストラゼネカが共同開発しているワクチンは、20億回分の生産体制が整っているとのことです。可能であれば、2020年内にも使えるようにする予定です。
開発している国 |
開発している会社 |
日本の動き |
イギリス |
オックスフォード大学とアストラゼネカ (共同開発) |
ワクチンの確保に向けて協議中 |
アメリカ |
モデルナ |
交渉中 |
アメリカ |
ノババックス |
― |
ドイツ |
キュアバック |
― |
フランス |
サノフィ |
― |
【国内】 ワクチンの開発状況
日本も独自開発を目指してワクチン開発を急いでいます。製薬会社のアンジェスと大阪大学は、6月末、日本国内で初めて臨床試験を開始しました。7月末までには、新型コロナウイルスに感染したことがない20~65歳の健康な人、30人を対象に改めて試験を行う予定です。
開発している会社 |
開発状況 |
アンジェス株式会社と大阪大学(共同開発) |
2020年6月末、臨床試験※を国内で開始した |
塩野義製薬株式会社 |
2020年内に臨床試験の開始を目指す |
第一三共株式会社 |
2021年3月までに臨床試験を開始予定 |
明治ホールディングス株式会社 |
2021年3月までに臨床試験の開始を目指す |
株式会社アイロムグループ |
最短で、2021年3月~臨床試験を開始予定 |
※ 臨床試験(りんしょうしけん)とは、安全性や有効性を確認するための試験のこと
2. ワクチンが使えるようになるまでの流れ
ワクチンが使えるようになるには、臨床試験を行う前の試験を1回、臨床試験を3回、合わせて4回行ってから承認がされて、使えるようになります。7月15日時点で、5種類のワクチンについて最終段階の試験が始まるとされています。
3. 開発中のワクチンに関する疑問
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開発されているワクチンには効果があるの?
現在開発が進められているワクチンの中で、「非常に期待が持てる結果が出た」と発表されています。臨床試験に参加した90%の人にウイルスを防ぐ効果が見られたとのことです。
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安全なの?
安全ですが、副作用があります。しかし、危険な副作用は起こりませんでした。臨床試験に参加した参加者の70%に、発熱もしくは頭痛の症状がみられました。研究者たちは、解熱剤や頭痛薬で対処できるとしています。
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いつから使えるようになるの?
2020年内にワクチンの効果が証明される可能性は高いですが、まだ多くの人が使えるようにはならないだろうと言われています。医療機関や介護関係で働く人、年齢の高い人、健康状態の良くない人など、感染リスクの高い人から優先的に受けることになります。
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次のステップは?
期待できる効果が出ていますが、「人間に使っても十分安全だ」と確認する必要があります。そのため、臨床試験をたくさんの人に行わなければなりません。
現在、大規模な臨床試験が予定されています。イギリスでは1万人以上、アメリカでは3万人、南アフリカでは2,000人、ブラジルでは5,000人が参加する予定です。
~実習生の皆さんへ~
新型コロナウイルスの対応について、医療機関で働く人たちは、毎日感染リスクのある厳しい環境の下で、心と体にも大きな負担がかかる中、強い使命感を持って、私たちの健康と命を守るために働いています。こうした中で、効果が期待できるワクチンの開発が進められているのは嬉しいニュースですね。私たちだけではなく、最前線でたたかっている人たちの健康と命も守ることを考えた時、ワクチンはとても重要です。
「早ければ年内に使えるようになる」と言われていますが、先に書いたように、一般的にワクチンの開発には調査だけでも数年、開発まで10年から15年かかるとされています。使えるようになっても、まずは感染リスクの高い人たちが使えるようになるので、それまでは、自分自身で免疫を高めて感染しないようにしていくことが大切です。
旅行に行ったり、大人数で集まったり、以前と同じような生活は難しくなりましたが、私たちの生活が「最前線で働く人たちによって支えられている」ということを忘れず、感謝の気持ちを持って過ごしていきましょうね。
出典: