本記事では、京都大学のウイルス・再生医科学研究所に所属する宮沢孝幸(みやざわ・たかゆき)准教授が提唱している「ウイルスを100分の1に減らす」感染対策についてご紹介します。
宮沢准教授は、ウイルスについて研究をしている先生です。日常生活の中でウイルスを減らすことが感染予防になるとしています。
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1. 対策は「ウイルス量を100分の1に減らす」
新型コロナウイルスに感染したばかりの時は、体の免疫が十分に働いていないため、周りの人にうつしてしまう可能性が高いです。しかし、免疫がきちんと働くと体の中のウイルスは少しずつ減っていきます。感染から1週間ほど経つとウイルス量は100分の1程度減少しており、他の人にうつす可能性はほとんどないと言われています。つまり、感染力の高い時からウイルス量を100分の1まで減らすと、感染を防げる可能性が高いということです。
2. 具体的なウイルスの減らし方
ウイルス量が多いほど症状は重くなり、他の人にうつす可能性も高くなります。そのため、日頃からウイルスを減らす習慣が大切です。感染経路ごとにウイルスの減らし方を確認しておきましょう。
① 飛沫感染
最も感染リスクが高いのは感染経路です。マスクで防ぎましょう。マスクをしないで飛沫を飛ばすような状況は、絶対に避けてください。マスクをすれば、感染者の飛沫が10分の1になり、対面する人がその飛沫を吸い込むリスクが10分の1になれば、「10×10=100分の1」にすることができます。
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② 接触感染
手洗いで防ぐことができます。水で15秒手洗いするだけでも、手についているウイルス量は100分の1まで減らすことができます。
③ 空気感染
空気感染とは、呼気で感染するものです。新型コロナウイルスで空気感染が起こるのは、「密」な状況の時です。「3密」を避けることが一番の対策です。
また、空気感染で感染するとされるウイルスは、基本再生産数(※)が〈8〉を超えます。
日本における新型コロナウイルスの場合は〈1.7〉程度で、冬に流行するインフルエンザの〈2.0~2.4〉よりも低い数字です。現時点で、空気感染による集団感染は報告されていません。そのため、空気感染はあまり心配する必要はありません。
※基本再生産数:感染者1人が何人にうつしたかという数字のこと
3. 日本で重症者、死者が少ない理由
日本人の生活習慣が大きく関係しています。
例えば、日本にはハグやキス、靴のまま家に入る習慣はありません。食事の前には手を洗ったり拭いたりする習慣があり、マスクに抵抗がある人もほとんどいません。知らないうちに、ウイルス量を減らす習慣が感染をおさえているのでしょう。
~実習生の皆さんへ~
感染対策として、①マスク、②手洗い・消毒、③3密を避けることが習慣になっていると思いますが、改めて、この3つの大切さが分かりました。感染や重症化の原因はウイルス量にあります。基本的なことですが、このウイルスを体の中に入れない、外に出さない、そのためにマスクや手洗いなどで感染対策を徹底することが必要です。感染された方のほとんどが飛沫感染や接触感染なので、空気感染はあまり怖がることはありませんが、人がたくさん集まる場所、換気のされていない場所は行かないようにしてくださいね。
今の状況が落ち着くまでまだ時間はかかりますが、色々とうまくいかなくても、「コロナのせい」と思わず前向きに過ごしていきましょう。口に出した言葉は、自分も周りの人も聞きますね。周りの人が聞いて前向きになる言葉、幸せになる言葉に変えられるように意識してみてください。大変な時期ですが、「コロナのせい」を「コロナのおかげ」に言い換えるだけでも違いますよ。
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